"ファッションの魅力を描く漫画家たちVol.7 西尾雄太" 補遺
このエントリは
サイト『FashonHR』上に掲載されたインタビュー
『ファッションの魅力を描く漫画家たちVol.7 西尾雄太』
から事前にいただいた質問のなかでインタビュー当日に使用されなかったものを独自に回答した補遺です。
上記リンクのインタビューとあわせてお楽しみください。
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・ファッションをテーマにした理由
これがプロパー商品であればもう勝ち筋ができあがってるのでやらなかったと思いますが古着であれば存分に自由にやれると感じられた、というのが大きな理由です。
最初のきっかけは、
―これはディレクターさんや監督にも直接お話ししたので言っていいと思うんですが『東京古着日和』(※1)というYoutube上で展開しているドラマがありまして。
言ってしまえば『孤独のグルメ』の古着版。「孤独のグルメ」の原作は漫画ですからこの手法を逆再生するように『東京古着日和』の漫画版のようなものを描けないか、と思い立ったんですね。
早速ネームを数本作成して初代の担当編集さんにお見せしたところ、漫画の連載であればもっと読者をひきつける太い幹があった方がいいよね、といったリアクションが返ってきまして。
それで、たまたまデビュー連載の参考資料として買っていた映画『ハイ・フィデリティ』のDVDを見返していたところ、
このプロットにそのまま手持ちのアイデアを代入すれば全部がきれいにまとまるのでは、と思いついたんです。
もともと自分が小売りの経験がありいつか小売りの漫画が描きたい、というのもあったのでこれもガッチャンコできるし、
となって今作が生まれたわけです。
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・漫画を描くうえでインタビューや資料集めはどのように?
取材に関しては同席してもらってる担当さんに頼りっきりで。
出版社の看板を借りて取材をお願いできるのは雑誌連載を持たせてもらっている大きな強みですね。
今作に限って言うと、
まず連載開始前に単行本のデザインをしてくださっている飛ぶ教室・森さんを通じて小学館の古着好きで有名な編集さんにお話を伺って。
この方は以前、鈴木夏菜氏による『NYLON TWILL』(※2)という古着テーマの読切を担当されてるんですが、これがすごくよくできた作品で。
この作品のおかげで自分はこのテーマで青春モノでやらなくていい、という踏ん切りがついたくらいなんですが。
で、その編集さんに都内の魅力的な古着屋や資料を伺ったり、
学生時代からの友人という古着系Youtuberのゆーみん&きうてぃ(※3)のお二人を紹介いただいてお話を伺ったりしました。
ほかにも古着系Youtuberの方々の動画はとても参考にさせてもらっています。
あとは実際に自分で古着屋に足を運んでお店の雰囲気を感じ、お店の方とお話をして、そこで手にした服をよく眺めることですね。
瑕疵のある古着を手直ししたり、アイロンをかけていたりすると、なぜこの服がこの形をしているのか、というのが
ぼんやりと見えてくる。
一度、化繊が流通し始める以前の、麻でできた古い消防服を手洗いしていたんですが
麻は水を含むと糸が膨張して目がぎゅっと詰まり信じられないくらい頑丈になるんですね。
水兵であるとか、危険が伴う水まわりの仕事につく人たちが着ている理由がわかりました。
それから、これは多摩美の生産デザイン学科に取材に伺った時なんですが、教室一杯にオランダ製だったかと思うんですがヨーロッパの手織りの織機が並んでいたんですね。
その織機のマックスの織り幅が70cmと聞いてそれでヨーロッパのスモックシャツの身幅がおおよそ一律70cm、両脇にセルビッジがついていることに合点がいったり。
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・主人公・椹木錕(さわらぎこん)は古着を愛し、女性を愛すのが少し下手な男性。もちろん西尾先生も古着を愛すという点では共通していると思いますが、恋愛においてはいかがですか?
僕は恋愛においては錕以上にからっきしで。
僕の過去作を読んでいただくとわかるんですが、どれも恋愛がすでにはじまっているところからスタートしているんですね。
つまり、色恋のすったもんだを描くことはできないけどいざ恋愛がはじまっているところから描けばあとは人間関係ですから、
そであれば自分経験や思考からも物語を紡ぐことができるだろう、と、そういう算段です。
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・作中で描かれる元カノ達は主人公に相当な恨みを持っている。何かを否定されたと感じている。「好き」が行き過ぎると近しい誰かの何かを「否定する」と感じることがありますか?
恨みを持っている、というのはちょっと違っていて、錕が燃料片手に火をつけて回っている、という方が的確かもしれません。
錕の視点を通して我々読者が見ているためそのように映るかもしれませんが、
彼女たちは実際には錕よりもずっと先に行って自分の人生を進めていますから。
それで、好きが行き過ぎるとほかの誰かのなにかを否定するか、についてはこれは当然イエスだと思います。
あらゆるものは対比によってその輪郭が浮かび上がるものですから、意図する意図しないによらずその過程によって何かを下げる、あるいは否定する、ということはままあることですし、
自分にもたくさん心当たりがあります。
その否定やサゲの当たりの強さをいかにソフトするか、あるいは自分の態度として出る前に内側の壁で跳ね返すかが、
人付き合いのほぼ9割を占めるのではないでしょうか。
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・読者はやはり服好きの方が多い?マニアックな描写もありますが、読者の反応はいかがでしたか?
どうでしょうね・・・フィードバックが得られるほど売れてない・・・ような気もしないでもないですが。
古巣ヴィレッジヴァンガードの下北沢店では幸いコンスタントに売れてくれているようで泥を塗ることにならずにほっとしてます。
SNS上で見かけたうれしい感想だと古着好きの読者の方から2巻表紙でビヨード-インディゴリネンスモックを描いていることをお褒めいただいて、
この作品をきっかけに実際に服を手に取られる方がいらしたのはうれしかったですね。
ちなみに、このパーカの上にビヨードというレイヤードは高円寺の古着屋アンコールのスタイリングを参考にしていることを告白させていただいます。(※4)
知り合いの女性読者の方たちからは主人公のトキシックな描写について非常に評価をいただいてそれは励みになるのですが
ほんとうはもっとドカン、と売れて僕や錕と同年代の男性にも届いてほしい、という気持ちがありますね。
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・別媒体のインタビューで、作中では「有害な男らしさ」を意識して描いていると仰っていました。男性がこういったテーマに触れるのはかなり珍しいと思います。触れる上で意識されたことはありますか?
いちばん大事にしたのはイシューが主題を食べてしまわないことですね。
つまり物語の縦糸はは錕と珉の関係の修復であり、物語の横糸は古着にまつわるお仕事モノであり、あくまでその2つがメインディッシュですよ、と。
あまりイシューが前に出すぎると、じゃあこれは漫画じゃなくていいじゃないか、新書の方が適してるじゃないか、となるのでその匙加減には気を付けながら描いたつもりです。
それで、「有害な男らしさ」についてですが、おっしゃるとおり、男性が触れるのはまだ珍しい、
言い換えればそれだけ女性にまかせっきりなわけで、とても良くないことだと思ってます。
それでは女性だけの問題として曲解されバックラッシュを生みますし、よしんば刷新されたとしても真の意味での解決には向かいません。
社会全体で考えていくことが大事ですし、この問題は女性だけに限らず性自認がTheyのひと、権威勾配の底辺側の男性にも向いています。
男性作家側から見たらチャレンジャブルでまだ手付かずの島が多く残されているテーマだと思うのでもっとこういったモチーフを扱った作品が描かれると
いち読者としても新しい漫画が読めて楽しいなぁ、と思います。
パーソナルな話をすると、ヴィレッジヴァンガードのお茶の水店で働いていたときの話、
当時上司から強く数字を求められ、家に帰って漫画を描き、同時に村上隆さんのスタジオに出入りして巨大なペインティング作品を描き、という日々を過ごしていて、
人生でおそらくもっともハードで密度の高い季節を過ごしていたんですが、
そのしわ寄せとして下についてくれていたスタッフのケアが疎かになり、あまつさえ小さなミスや反発に対しても攻撃的になっていました。
そんな自分に対する反省もこの漫画には込めています。
もちろん、漫画を描き上げたことで禊を済ませた、なんてことは考えてはいけないし、引き続き向き合っていくことが自分の課題だと感じています。
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・西尾先生が思うファッションの魅力
まず、人間の生活の基幹を担っているにもかかわらずそのほとんどの工程が自動化されていないプロダクトでかつ、
サイズ展開も含めればまったく同じものが異様に少ないという点が非常にコレクタブルですよね。
靴やカバン、アクセサリーなどはそれ単体で自立しますから身に着けなくても眺めて彫刻的な美しさを感じられる。
ひとが際限なくスニーカーや時計を集めてしまうのも、そういったところが理由だと思います。
それから、僕にはひそかな変身願望があって。
服はさまざまに着替えることによって、肉体を改造するよりも手軽に、かつ劇的に自身のシルエットを変容、拡張できる。
さらにそこに文化がレイヤードされているものですからたとえばハードなパンクファッションを着れば相手にはパンクスの人なのだな、と伝わる。
で、翌日にスーツにブリーフケースを身に着けていたらこんどはビジネスマンだと伝わるでしょう。
現実には同じ人間にもかかわらず。
そんなありえないようなことがいとも簡単に起こるってなかなかないし素敵なことだと思うんです。
そういうところがファッションの魅力だと思っています。
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・古着は「偏愛」。一方通行の愛ですが、ファッション以外に「偏愛」はお持ちですか?
この漫画をはじめてからだいぶファッションに押され気味ですが
相変わらずレコード蒐集を含めてダンスミュージックは好きですし
漫画も好きなつもりでいます。
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・「好き」と「日常・人生」の狭間で揺れることはありますか?
あまり無いですね。
興味のあるものだけ拾い集め積み上げてきたのが自分の人生ですし。
仮に家庭を持ったりしたら他人の人生が流れ込んできてまた別の感覚が芽生えるのかもしれませんが、今のところは。
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了
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(※1 東京古着日和 - YouTube)
(※2 NYLON TWILL | やわらかスピリッツ)
(※3 ゆーみん&きうてぃ - YouTube)
(※4 https://www.instagram.com/p/CjH6YMiuOy-/?img_index=2)
ベスト・アンド・ワースト・シングズ 2020
去年は音楽のふりかえりをしましたが今年はあんまり音楽聴かなかったのと一点に絞って紹介する体力もないので散漫なかんじでいきます。
●ベスト機器
XDJ-RX2
今年は2回ほどDJの予定があり、プラス自分の原画展でも曲を流したかったのでそろそろTRAKTORのコントローラーでちまちまやるんではないDJも習得したいなぁと思い投資と割り切って購入するもすべて流れてしまいました!!!無念!
でも発売すぐに買って今やすっかりヒスノイズが混じるようになったオンボロDJM-400から乗り換えるにはこの機会しかなかったのかも。
macbook pro
コロナのアレコレでAbleton Liveが安くなっていたタイミングとオンライン原画展の売上が入ったのが重なったため、寝室のPCでDTMができるようにデスクまわりを整えることに。PC本体もLate2011モデルから2020モデル(not M1)に大進化。27インチモニタなども購入して寝室のPC環境が一新しました。
どのみちこの先また音楽漫画を描くときにはこのあたりは避けて通れないと思っていたので必要経費でしょ、と。Liveはちょっとずつ覚えていっている最中です。
上記ふくめこのへんの小物は今年のワイパさんの1人会フライヤーにモロに反映されてます。手の届くところに資料があるって便利ね。
●ベスト布
ロンドンストライプ
もともとストライプシャツは好きなのだけど今年は謎に白×黒ストライプのシャツばかり買っていました。
AV機器/インターネットの布
一昨年UNIFIEDGOODSというイギリスの古着屋をフォローしたあたりから火がつきはじめ今では毎日2回はヤフオクをチェックしないと禁断症状が出るように。
この春ÉtudesがWikipediaとコラボレーションしてリリースした総柄の布もセールでゲットするもこのコロナ禍で出番来ず。
PORTER - CITY DAYPACK
PCポケットが独立してるリュック以外持ちたくなくてこれはPuma × STAMPDからの買い替え。取り回しも良くなり容量もちょい増えていい事ずくめ。
反対に、かっこつけて出かける用事が全滅したので昨年気合い入れて買ったほぼ同容量のKILLSPENCERの出番はゼロ。
●ベスト食
掛川食番楽 遠州屋
年に一度集まる漫画友達と偶然入った地元食材の呑み屋がめちゃめちゃウマかった。
舌がバカなので閾値を超えた食べ物はすべてウマい以上の感想が引き出せないのだけどここのメニューはまた人連れて行きたいと感じさせるほどにどれもよかったです。
あと、僕が下戸なんで呑めるひととでないと入れないんですよね。近くに寄ることがあったら声かけてください。
手打ち蕎麦 naruのトマトせいろ+チーズトッピング
くるみタレせいろが鉄板すぎて安牌狙いでいつもそればっか頼んでたんですが冒険してみたら大正解。
●ベスト曲
ベストシングル
Myd / Superdiscoteca (nit remix)
ジョルジオ・モロダ―みたいなデケデケベースにこれでもかという豪奢なストリングスが乗るニューディスコ。完全に僕の好物です。
nitってアーティストが何者かぜんぜんわかんないんだけどどうも界隈のフォトグラファーっぽい?
ベストアルバム
The Avalanches / We Will Always Love You
ベストMV
Dorian Electra / Sorry Bro (I Love You) (Lil Mariko & Full Tac Remix)
よくある半裸の女子がボディを使って洗車してるポルノ、、、の性別を反転させたに飽き足らず鑑賞者であるはずの存在が画面に登場し
カメラに向かって暴力的な自慰をしてみせる。
ホントはちょっと慎重に言語化しないといけないんですが端的に言ってブチ刺さりました。
Duck Sauce / Mesmerize
電子透かし入りまくりのストック画像と映像編集ソフトの体験版でこしらえたその先にひろがのはるめくるめく直腸トレイン!これは原価0円のテネットか!!?
ベストオンラインコンサート
Chance The Rapper Virtual Concert: Chi-Town Christmas
神。
●ベスト漫画
ベストコミック(JP)
水は海に向かって流れる / 田島列島
寡作だけどバッターボックスに立てばすべてがホームランのモンスター作家、田島列島氏の最新作が完結。
この感動は言葉にするだけ嘘っぽくなってしまうのでみなさん読んでください。全3巻でお求めやすい。
昭和まぼろし 忘れがたきヤツたち / つげ忠男
つげ忠男先生の新作が2020年に!しかもこれが有無を言わさぬオモシロさ。
送り仮名とかも変に直したりせず装丁も割り切りのいいペーパーバックであったりとそういうものすべてが作品のパルプ感に強度を与えていてすてき。
あとコマ割りがちょっと歪んでるというか全体的にバイアスがかかってるのが身体性を感じてよかったです。
ベストコミック(WORLD)
レベティコー雑草の歌 / ダヴィッド・プリュドム
正直レーベルへの応援半分であまり前情報を仕入れずに注文したんですが(もちろん、ダヴィッド・プリュドムの名前くらいは知ってましたよ、、、!)
とにもかくにも素晴らしかった。画とストーリーが高水準でとろけ合うたった一夜の物語。
ザ・ロンリネス・オブ・ザ・ロングディスタンス・カートゥーニスト / エイドリアン・トオミネ
モレスキンの手帳をそのまま大きくしたような装丁と、ページに印刷された青い方眼に沿って描かれたコマの中を進む自伝的ストーリー。
他人の日記を覗いてるような没入感は『体験型』と形容していいほど。
はじめて日本でおこなったサイン会のエピソードが最高すぎてこれ1本で定価のモトがとれます。
ベストコミック(WEB)
HOFAH平成 / 青9HP
2019年2月の作品なんだけど知ったのが今年の暮れだったので入れさせてください。
この作品がマイ・ブロークン・マリコやババヤガの夜の前に存在していたことに肩を抱いて震えましょう。
ベストコミック(連載)
未来人サイジョー / いましろたかし
最高。
●ベストアニメ
PIPINE / Emmanuel Lantam
https://www.instagram.com/emmanuellantam/?hl=ja
ミッドナイト・ゴスペル
https://www.netflix.com/title/80987903
●ベスト特撮
ウルトラマンZ
ご唱和ください、我の名を!
●ベスト家
座二郎邸(オープンスカイハウス)
季節外れの雪の日に、みんなで遊びに行きました。
●ベストYouTuber
新説・シマダボーイのラテン講座
祝・復活
●ベスト展示
Reality&Fantasy The World of Tom of Finland
東京での展示の際に都心部での感染者数がうなぎ上りしていて観に行けず、
一時はこのパンデミックがおさまったらいっそLAのTOM Houseまで飛ぶか、ってほどに思い詰めていたところに大阪巡回のアナウンス。
この直後に大阪もけっこうな感染者数を記録してタイミングが良かったとしか言いようがないです。
はじめて目にした原画は本命ではなかったカラー作品が印刷物とは発色もアウラも段違いで思わぬ収穫でした。
●ベスト地獄
20時間コンテンツ地獄
●ベスト無
運転免許証取得
仕事もないし暇すぎるため近所の自動車学校に通ってこの夏取得。
以来まったく乗車しておらずペーパードライバーまっしぐらです。
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●ワーストシングス
友達が死んじゃった
バッドオブバッド。
一日として彼女のことを考えない日はないくらいくらってしまって。
いなくなったひとについてすることはすべて自分か残された人間のためのイニシエーションだということが、たとえ頭ではわかっていてもドライにつきつけられた、そんな下半期でした。
こういうことってあるんだな。
LOUNGE NEO閉店、そして
クラブで待ち合わせていない誰かと会い、2、3分立ち話をする。それだけのことがどれほど自分の生活に栄養を与えていたかに気づかされた。
白状するとコロナ禍以降の配信に熱狂したことは一度もなくて、芯の温度は今もだんだんと奪われていっている。
注意してできるだけ気持ちが離れないようにしているけど、その注意を自覚するたびに何とも言いえない気持ちが広がります。
廃番
サントリー南アルプスPEAKERビターエナジーに続き同じくサントリーの天然水SPARKLEジンジャー&カフェインまでも廃番になりBAD。
後者はエナジードリンク等味濃いめの炭酸飲料の割材にちょうどよくて愛飲してたのにソッコーで棚から消えてやんなっちゃう。
コロナ鬱
漫画が描けなくなり気力も上がらないので心療内科にかかったりしましたが世間話程度に「いや~、夏バテ、ですかねぇ、ハハ・・・」と口にしたところ
大量に夏バテの漢方を処方されるなどして腹が立ち通うのをヤメました。キレる体力はまだあったみたい。
セルフ事故り
でかいジムバッグを提げて自転車に乗っていたら車輪が荷物を巻き込み塀に顔面から激突。物心ついてからは初めてじゃなかろうか、という救急車に揺られ病院へ。幸い大したこともなく腫れもすぐ引いたんだけどまだちょい頭痛を引きずってます。みんなも気をつけてね。
マスク
顔が隠れすぎると不審なので大好きな帽子が被れなくなったのがすごく残念で。
マスクも買ってみないと合うかわからないー返品もできないーでギャンブル性高すぎて辟易。
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いろいろ書いてきましたがほとんどコロナが軸になっていていかに振り回された一年か再認識しました。
とくに締めの言葉はありません。人生は続いていきます。
みなさまよいお年を。
2年目の悪口
基本的に作品に対して何の違和感も感じなかった方には以下の文字群はただストレスを感じさせ、鑑賞体験に泥を塗るもの以外ではないので速やかにタブを閉じていただければと思います。
が。しばしば「美しい」と「問題作」は両立する。この作品もそのひとつに数えていいと思う。
以下ネガティブなポイントのみを挙げます。
これについて一瞬天然を疑ったけど木瀬のある台詞が象徴するように決して無自覚ではなかったはずだ。
(実際天然であろうところも山ほどあり、いくつかはうしろに併記する。)
僕は絵がよく動いているとそれだけで楽しくなってしまうおめでたい人間なので存分に楽しめたが決して積極的に親子連れ立って見に行ってほしいとは思わない。もし、万が一。自分の子供がおっこのように育ってほしいと思う親がいれば、それははっきりと危険なことだと止めに入ることだろう。
僕は映画の先にあるおっこの姿を想像する。そしてこのまま受け止め続けたさきにある答えとしておっこは神様仏様になるしかないのではないか、と思うのだ。
まぁ一度死に(かけ)、霊験を得ているという点では充分素質有りなのかもしれないが、
悲しみのさなかにある年端も行かない少女が作中、自分を滅し、許し、奉公し、周りの大人たちの誰よりも善なるものであろうとする姿はあまりにいたたまれない。
観ながらに-ちがうちがう、大自然と個人を同じ尺度で測らないで!それはやばいよ!-何度となくそう思った。
あかねくん相手に怒気をあらわにしていた数分がなつかしいですね。
(ところで美少年の流し目に顔を赤らめるシーン、もうちょい何かあるのかと思ったらなんもなかったですネ)
周りの大人たちはあまりにも気づかない。むしろあんたよく気づく子だね、みたいに言う。
それでときたま美味しんぼの栗田さんの同僚A・Bみたいになる(※それぞれ荒川絹江、三谷典子という名前があります。念為)。
祖母は女将としてのマナーなど表面だけを見、しかしひとを見た目で判断するな、と説く。
劇中での祖母は故意でないにせよ娘夫婦(であってるよね?)を殺めた男を前に一粒種の孫を隔離することもできずただ帳簿の前で崩れ落ちることしかできない。そんでそのあとはなんかケロっとしてる。びっくりするわ(この映画急にケロっとしすぎ問題)。
亡くなったおっこの母(メーテル似)はつまり祖母の娘であるというその導線を、この脚本家はまったく意識していないように思える。おっちょこちょいにもほどがあるだろう。
なんにしてもこのキャラクターは映画にとってかなりキビシイ存在だ。
彼らが昇天するにあたっての理由が存在しない。
たとえばこれがおっこが大人になり見えなくなる、というなら道理はあるが、そういう話ではないのでやはりそうはない。
では、というと。
なんと突然天の声に言われたのでそうするのだ。作中でもそう言っている。
まじか。
このへんおっこの方に理由があるように演出するのはかなり悪手のように思えました。おっこ側から見えなくなる、という描き方をするのはちがうくないですか?
鈴鬼にいたってはどうやら退場しないようだ。しかし同じように見えなくはなる。なんなの。
彼らを現世につなぎ止めていた物はなんだったのか。
美陽。彼女が真月が生まれる前の姉であるならば妹が理由にはなりえない。とどまっているあいだに情がわいたのは確かであろうが本当の理由は棚上げされたままだ。
いや、おっこを通じて今でも好きである、とは伝えられたからまあいいのか。(ただ、それならそれでもっと早くに肩に手を置かれるべきだと思う)
このへんウリ坊がいきいきと魅力的に描かれている分いっそうおなかのあたりがゴロゴロするんです。
いろいろ書きましたが冒頭に述べた通り観てソンはない、気持ちを大きく揺さぶられる映画だと思います。
西尾雄太のおんがくABC 2019
今年のリリースでよく聴いたものをざっくりと。相変わらず順位付けは苦手なのでA~Z順に。
-じつは今年の夏、音楽ライターの松永良平さんのイベントにお呼ばれしてokadadaさんとともにトークをしたのですが、そのひとコマに僕が持ち込んだレコードを聴きながらそれについてふたりでトークをする、というとんでもない羞恥プレイがありまして、このポストはその続編のような気持ちで書いてます。
それではさっそくまいりましょう。
Cassius / Dreems
2016年のアルバムIbiforniaの続編のような、とりたてて派手ではない、なんならLPに封入されたポスターなんて前作の裏ジャケを引き伸ばしただけだ。そんなアルバムだからこそ、余計にその直後のZdarの突然の死をいっそう際立たせる。
引いた線がぷつりと途切れるように、なんの前触れもなくこの世から去ってしまった彼のことを想う。ただただ、悲しい。
Dorian Electra / Flamboyant
Flamboyant=きらびやかな、の名が指すとおりバチバチに凝りまくったMV、そしてやたらと差し込まれる頭突きでグラスをカチ割るシークェンス(わぁきれ~~い)・・・注目のYouTubeスター、ファーストアルバム。楽曲群はMoving CastlesのRobokid、100 gecsのDylan Bradyらフューチャーベース界隈のプロデューサーがしっかりと脇を固める。
ABSRTSTがプロデュースした表題曲がとくにいい感じ。
dj newtown / WEST MEMBERS
「四つ打ちにすれば満足」「自分の曲を切り刻んでるときが1番楽しい」インターネットのどこかでで誰かがつぶやいた言葉を代弁するかのような、カットアップハウスの雄による反復の快楽に溺れる11曲。dj newtown 11執念もおめでとうございます。
SUCCESS IS THE BEST REVENGE.2020年もやっていきましょう。
Philippe Katherine / Confessions
フランスの個性派俳優によるシャンソン、フレンチポップスの上質なパロディ。と、書くとハハン、そいうもんかと流されそうですがTrapはじめHip Hop的なビートを数多く取り入れた意欲的でひとクセもふたクセもある楽曲群は一聴の価値大あり!
順位付けは苦手と先に書きましたがこのアルバムとの出会いは間違いなく今年の一番の衝撃。
解説については以下のブログが詳しいけどなんとエスプリの聴いていることか!
カストール爺の生活と意見: 2019年のアルバム:ちんちん鼻の告白
教えてくれたGottiさんありがとうございます。
Teki Latexの2007年ソロアルバムに通じる空気も、と思ったらやはりここでも噛んでいるChilly Gonzales!お前!
Stardust / Music Sounds Better With You
フィルターハウスの夢女子としてこれを挙げないわけにはいかない、20周年の節目に出るという噂から一年遅れてリリースされた永遠のクラシック。
リリースの遅れにあたってThomasがおムズがりになったことは想像に難くないけど真相は藪の中。
ひとつまえのポスト(『アフターアワーズ』に登場する実在のレコードを作者・西尾雄太が解説!/クラブの音が聴こえるガールミーツガール青春譜 Pt.2 - TURNTHATSHITUP!)でアフターアワーズ作中のひとコマにふれ"ちなみにこのシーンには大きな嘘があり2018年現在チャカ・カーンをサンプリングしたこの曲はすくなくとも正規の方法でダウンロードすることはできません。"と書きましたがやったね嘘じゃなくなりましたヨ!
ところで映画『CLIMAX』のパンフの中で三田格氏が「Music Sounds~はコカインを讃えた曲」って書いてたけどそれってどこ情報?
リマスタリングは聴き比べたらやや解像度が上がっているか?といった控えめかつバランスの取れた印象。
The Phantom’s Revenge / Commercial Breaks pt Ⅱ
スナック感覚でつくった楽曲が大真面目につくった曲よりもよく聴こえたりするのがえてして音楽の面白いところだったりするわけですが今作はそんな金継ぎ職人The Phantom's Revenge師匠による深夜放送をザッピングしているかのようなスキット込み一挙全26曲。"#27 sampling is bad dont do it"(最高のタイトル!)の音の極悪さに爆笑。
ところで最近こういったわざと音割れしたサウンドを用いて"ここでは音割れするほどデカい音が鳴っている"といったタグを植え付けた楽曲が増えている気がするんですが考えすぎですかね・・・?
待望の初来日も最高、つたない英語で「myspaceで君を見つけてからずっとファンだよ!」って伝えられてよかったです。
Young Bae / Bae5
ユーチャーファンク界隈のなかでもはやくからMura MasaやBrasstracksらとコラボレーションしシーンの円周を拡げるために貢献し続けてきた(と本人が思っているかは謎だけど)Yung Baeのセルフタイトル5作目は周辺から、ひいては本人の過去作からもあたまひとつふたつ飛び抜けた軽快なディスコアルバム。完成度高し。安易なアニメのキャプチャ画像ではない洒脱なアートワークも好感度高いです。
100gecs / 1000 gecs
バブルガムビーツの超新星はたまた能天気なSOPHIEか。小鉄さんの記事シカゴ発、異形のポップ・ラップ・デュオ 100 gecsがアルバムをリリース | block.fmで知ったユニット。アルバムリリース後いきなり4GBのステムをばら撒いてリミックス大会がはじまったのもSNS1.0ってかんじでよかったです。twitterで100 gecsの話をするとしょっちゅう海外からリプライがあるので冗談抜きで熱量高まってるんだなと思います。ところで↑のDorian ElectraのプロデュースふくめDylanの把握できないほどの外仕事の量が心配です。楽曲とは関係ないところでは自然体のLauraの立ち姿に潮流の速さを見たりも。
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そのほか
ベストパフォーマンスで賞:Missy Elliott
ミッシーのトップオタが死ぬときに見る走馬灯。こういうド派手な金と肉体の使い方は見ていて晴れやかな気持ちになりますネ。
新曲もめちゃくちゃ音数少なくてヤバかったです。
ベスト客演で賞:Cola Boyy
昨年のMYDに続き今年はHypnoloveにNicolas Godinにとフランスからの熱いラブコールが。本人新譜のMVも共産方面への振り切り方がMAX。そうだよね、やっぱ子供から教育をしないとね。このまま我が道を貫いてほしいです。そういえばceroの高城さんがバンド時代のCola Boyyと共演したことがあるんだそうです。なにそれ!
ベストレーベルで賞:Local Action
年末のマルチネ放送室βでダダさんが今年はWhitesが良かったって話マルチネ放送室β | block.fmをしていて、それで言ったら僕はLocal Actionだなー、と。というかほぼFinnとIndia Jordanなんですが。ほかにもLena RaineによるゲームミュージックのOSTもリリースしたりしていて面白い動きを続けてますね。Finnははやくアルバム出してください。
ベストマーチャンダイズで賞:GLOO
Iglooghost x Kai Whiston x BABiiによるユニットが始動とともにアパレルコレクションもスタート。楽曲は8割Iglooghost色だと思います。かわいいね。
ベスト小骨取れたで賞:ZZZ / Lion Breakbot remix
2008年リリースのこの曲のアウトロで使われてる声ネタが妄想代理人1話のマロミの台詞であることを11年目にしてついに突き止めてちょうスッキリ!(3:31あたりから聴いてください)
そんなかんじです。もし来年があれば来年お会いしましょう。
それではみなさんよいお年を~~~。単行本買ってね~~。
『アフターアワーズ』に登場する実在のレコードを作者・西尾雄太が解説!/クラブの音が聴こえるガールミーツガール青春譜 Pt.2
はじめに。
このテキストは拙作『アフターアワーズ』1集発売時に小学館『コミスン』に掲載された特集「『アフターアワーズ』に登場する実在のレコードを作者・西尾雄太が解説!/クラブの音が聴こえるガールミーツガール青春譜」
になぞらえて著者個人が単行本第2集第3集に登場した楽曲について解説するものです。
コミスンおよび小学館さまとは無関係であること、作品の内容に踏み込んでいることをご理解のうえお楽しみいただけましたら幸いです。
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さて、
改めてこの作品の音楽面にクローズし、無粋な解説をするならば(DJとVJを入り口にこそ持ってきていますが)実のところイベントオーガナイザーが手を引きひとりの新しいオーガナイザーを育む物語、ということになります。
この構成はあらかじめ設計していて、そのために、作中ダンスミュージック・シーンの顔であるDJ「以外」をどのように活躍させるかが肝でした。
なにせオーガナイザーの役割とはそれらを把握してこそ務まるもの。
然るに、本作、こと2集においてはそのほぼ一冊がそのガイダンスとしての側面をもっています。
6話では(騒音等の理由により今は制限されていますが)海の家など「クラブの外」でのイベントにふれました。舞台になるボウリング場もDJイベントを多く開催する笹塚ボウルがモデルになっており、そしてケイがひそかに画策していた「レイヴ」へと話は向かいます。
7話の舞台はウェアハウスパーティ。PAのポジションについての話が挿入され、また、のちの人力として技術屋・中村がセグウェイに乗りさっそうと登場します。
全体の雰囲気は新宿の地下テナントで行われた2015年のAKIPARTYを参考にしました。
ギーク向けクラブイベント #akiparty 新宿2015 まとめ - Togetter
8話ではクラブの店長が登場し実店舗としてのクラブの内側が語られます。そして前話の流れからサウンドシステムの話。
今話についてはLounge NEOおよび鈴木店長の多大な協力なくしては描きえませんでした。
9話はいよいよレイヴの会場となる場所へと足を踏み入れます。モチーフは実際に各種のイベントが催されていた旧東京電機大神田キャンパス。取材にあたって住友商事株式会社にご協力いただきました。
後半はトラックメイカーとしての新川にスポット。作中語られませんがダンもまた作曲活動をしており海外レーベルから手堅くリリースを続けているようです。
そしてこれらの断片が重なり合い17話(3集P235)のケイの言葉、そしてそれを受けたエミの決心に導かれていくのです。
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前置きが長くなりました。さて、ここからはタイトル通り各所の小ネタを開陳していきましょう。とはいえ1集ほど作為的なものは多くありません。
#8
クラブ内踊り場に貼られたポスターに書かれているテキスト、"EDM SUPER ULTRA HYPER ANTHEM"はfazerock氏によるその名が示す通りのビッグルームハウス有名曲の多重マッシュアップ(現在はサウンドクラウドからは削除)のタイトル。
その隣の #仲間#最高かよ とは一時SNS上で物議をかもした映画『WE ARE YOUR FRIENDS』の日本国内宣伝に用いられたハッシュタグ。
モデルとなったLounge NEOを「チャラ箱」に改変したための演出ですが図らずも自身の性格の悪さが露呈する結果となりました。
P86、マユミのヘッドホンスタイルは掟ポルシェ氏がDJ中に用いるそれを参考にしています。
#9
新川の制作する楽曲はYunomi『大江戸コントローラー(feat. TORIENA)[Batsu Remix](DJ酒井法子 Remix)』からさらに派生していったいくかの亜種リミックスをイメージしていました。
この作品では作中に流れる音を擬声語を用いて表現することは意識的に避けてきましたがここではあえてストレートに表現しています。
音の洪水のなかから浮かび上がる「おにいちゃーん」の音はおそらくおにいちゃんCD(というサンプリングCD)からのサンプリングでしょう。
このリミックスをベースとする各エディットは以下から。
余談ですが初期のネームでは新川はエミの上司となる予定でした。未来が変わってよかったね。
#10
2014年秋、京都メトロで行われた『出張版 月光密造の夜』翌日僕はスカートメンバーや漫画家の見富拓哉氏、大沖氏らとともに京都市内を練り歩いていたのですが、
10話冒頭のアドトラックのラッピングはその日イノダコーヒーに茶をしばきにいった際に撮った写真を下敷きにしています。
ダンスミュージックの漫画と定めていたため正攻法でバンドを出すのは早くから諦めていましたが、しかしなんらかの方法でスカートを登場させたいと思いこのようなふざけた(ひどい)かたちをとりました。
(正攻法、かつ先行する作品で上記の見富拓哉氏による『バンドをやってる友達』という大傑作があります。もし手にする機会があればぜひともご一読を)
この話の筋とは無関係ですがスカートのシングル『静かな夜がいい』はそのモチーフのひとつに本作『アフターアワーズ』をあげていただいています。
たいへん光栄なことでとてもうれしく、原稿期間中もこの曲にとても勇気づけられました。
本作3集表紙イラストは『静かな夜がいい』MVにインスパイアされ描かれたものであります。
10話ラストにケイが聴いている曲はStardustの唯一にして、そしてDaft Punk『One More Time』誕生のきっかけともなった記録的ヒット曲『Music Sounds Better With You』。
この曲の解説についてはのちに回しますがこの場面のキーアイテムとしてShazamを用いたのは音楽漫画として、また、現代劇としてけっこういい仕事したのでは、と思っています。
#11
「ガバチョ!!」は3話の"ハウス"パーカに続きフロッグリバーより。
(ガバチョ→ガバ=Gabberへのパスワークはオリジナル)
何度となく話していることですが本作のサブキャラクターでおしめさんのみ漫画『フーテン』になぞらえたネーミングから外れている(それを思いつく前から名前つきで存在している)ためかわりにハウスミュージック青春ドラマ『FROG RIVER』のイメージを積極的に投影しています。
クライマックス、割れたレコードはDJ Sneak/DJ Sneak epからC面に『Mind Destruction』が収録されている盤。
不安なシーンには不安な曲を、という心遣いですね。
(13話ラストのフロアマットのテキストも同様の心遣い)
ケイのレコードバッグに入っていそうなレコードからそれらしいタイトルのものをチョイスしたかたちです。
#12
12話において『Music Sounds~』が収録されたレコードがオリジナル12インチではなくAlan Braxeのアルバムであることが明らかになるのですが
これはオリジナルがレーベル共通ジャケであり絵的に楽曲との紐づけがしづらいこと、そして何よりこのアルバムのアートワークをのちにJusticeを結成する
Gaspirator a.k.a.Gaspard Augéと彼が所属するレーベルed bangerの看板アートディレクター/イラストレーターのSo Meが手掛けていることが理由となっています。
"I Feel Like The Music Sounds Better With You"、あなたといると音楽がよりよく聴こえるようだ、と繰り返されるこの曲はつまり
3話で引用したJustice『Never Be Alone』(この曲のアートワークもやはりSo Meによる)と同じくケイからエミに向けられたメッセージであり、ゆえにそこに関連性を匂わせたかったのです。
ちなみにこのシーンには大きな嘘があり2018年現在チャカ・カーンをサンプリングしたこの曲はすくなくとも正規の方法でダウンロードすることはできません。
じつはエミのようにiTunes storeで検索したとしても見つからないのです。
しかしながらビルボードが今年6月、メンバーが20周年に向けリマスタリングのためにスタジオに入ったと報じておりそう遠くないうちにこのような脚注をする必要がなくなる日が来るかもしれません。
#13
ブレーキランプ5回点滅とはもちろんあの曲。これについての説明は必要ないでしょう。
#15
Superfunkの『Lucky Star』とBasement Jaxxの『Lucky Star』。占いにまつわる回想の中で同タイトルのレコードを2枚提示、そのチョイスを委ねることで徐々にこの先の展開への導入をつくっています。
ところで次のページより登場する占い師は2話においてケイが夢想する皺を刻んだ未来の自分と同じ姿のように見えます。
P157のジャケットは国士無双×HyperJuice『Anthem』のもの。執筆中はイベントの前売り特典としてデータのみ存在がするものでしたがのちに実際にレコードとしてプレスされ現実のものへと変わりました。
最終話
アフターアワーズ連載開始からさかのぼること2年前。下北沢インディーファンクラブ2013 トーベヤンソンニューヨーク終演後の会場で僕は迂遠な前置きと、でもたしかな決意をもってtofubeats氏にひとつのお願いをしました。
そして2017年の冬。最終話の執筆にあたって改めてオカダダ氏tofubeats氏両氏に彼らdancinthruthenightsによるバージョンの『Local Distance』を使わせてもらう許諾をとります。
この曲をこの物語の最後のバックトラックにすることはプロットの第一稿からずっとゆるぎませんでした。
紙面の都合でリリックは半分だけしか掲載できませんでしたが
読んで何かを感じてくれた方ならきっと楽曲にたどり着いてくれるだろうと、そんなに心配はしていませんでした。
宇多田ヒカルをサンプリングした"曲"そのものはメディアに乗せることはかないませんがこういったかたちであればリーガルに届けられる。
この曲を、紙とインクでもってこの時代に固着できたことを、僕はおおいに誇りに思っています。
いささか感傷的なテキストになってしまいましたがこの曲が作品にとってそれくらいの意味を持つ曲だと伝えたかったのです。
さいごに、1話でエミが受け取ったレコードのうちのひとつ、オノマトペ大臣の『街の踊り』にフォーカスしてこの物語は幕を閉じます。
このレコードも、我々の時代を語るための重要な一枚だと思い、またdancinthruthenightsのふたりとも親交が深い関西出身のアーティストということもあって結びの一枚としました。
(語るべきことはその前のページですべて描き切っているのでここではあくまで風景のひとつとして描いています。)
Maltine Records - [MARU-098] オノマトペ大臣 - 街の踊り
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以上はすべてアフターアワーズの音楽漫画としての側面をより楽しむために書かれたテキストであり、
本筋である恋愛と成長の物語を理解するために必要とするものではありません。
すでに単行本をお持ちの方はこのページに貼られたリンクとともに読み返していただけたら一読目とはちがった感想を得られるかもしれません。
このテキストで興味を持たれた方がいればよろしければ単行本を。全3集と集めやすいです。
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■リンク
DJ Badboi氏による『アフターアワーズ』作中に登場するレコードのみを用いたDJミックス
『アフターアワーズ』に登場する実在のレコードを作者・西尾雄太が解説!/クラブの音が聴こえるガールミーツガール青春譜 コミスン
AFTER HOURS マーチャンダイズ
著者twitter 西尾雄太 NISHIO,yuhta (@snobby_snob) | Twitter
アフターアワーズおしらせ アフターアワーズおしらせ (@after_h_ours) | Twitter
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■著者近況
10/12発売の月刊コミックビームより新連載「水野と茶山」がスタートします。