2年目の悪口

以下は2018年10月9日、映画鑑賞当日に知人に宛てた感想に(上映中であるような)一部表現に修正を加えたものです。
基本的に作品に対して何の違和感も感じなかった方には以下の文字群はただストレスを感じさせ、鑑賞体験に泥を塗るもの以外ではないので速やかにタブを閉じていただければと思います。
西尾がいかに浅薄で性格が悪いかを確認したい方、スクロールしてどうぞ。
 
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映画 若おかみは小学生!について。 2018.10.09
 
間を置いて、傑作であるという評価は覆らなかったものの、同時におおくの問題をはらんでいると感じた。
が。しばしば「美しい」と「問題作」は両立する。この作品もそのひとつに数えていいと思う。
 
所作、絵作り。いい部分いっぱいあります。が今回はそこは思い切って飛ばします。
以下ネガティブなポイントのみを挙げます。
 
一番の問題はこの作品に一見道徳的な正しさがありそうな気がする、そのようにつくられていることだと思う。
これについて一瞬天然を疑ったけど木瀬のある台詞が象徴するように決して無自覚ではなかったはずだ。
(実際天然であろうところも山ほどあり、いくつかはうしろに併記する。)
僕は絵がよく動いているとそれだけで楽しくなってしまうおめでたい人間なので存分に楽しめたが決して積極的に親子連れ立って見に行ってほしいとは思わない。もし、万が一。自分の子供がおっこのように育ってほしいと思う親がいれば、それははっきりと危険なことだと止めに入ることだろう。
 
さて、非・道徳的さとは。
僕は映画の先にあるおっこの姿を想像する。そしてこのまま受け止め続けたさきにある答えとしておっこは神様仏様になるしかないのではないか、と思うのだ。
まぁ一度死に(かけ)、霊験を得ているという点では充分素質有りなのかもしれないが、
悲しみのさなかにある年端も行かない少女が作中、自分を滅し、許し、奉公し、周りの大人たちの誰よりも善なるものであろうとする姿はあまりにいたたまれない。
観ながらに-ちがうちがう、大自然と個人を同じ尺度で測らないで!それはやばいよ!-何度となくそう思った。
あかねくん相手に怒気をあらわにしていた数分がなつかしいですね。
(ところで美少年の流し目に顔を赤らめるシーン、もうちょい何かあるのかと思ったらなんもなかったですネ)
 
そんな滅私奉公マンに対して
周りの大人たちはあまりにも気づかない。むしろあんたよく気づく子だね、みたいに言う。
それでときたま美味しんぼの栗田さんの同僚A・Bみたいになる(※それぞれ荒川絹江、三谷典子という名前があります。念為)。
祖母は女将としてのマナーなど表面だけを見、しかしひとを見た目で判断するな、と説く。
 
そう、この祖母!僕はこの祖母にめちゃくちゃ言いたいことがある!
劇中での祖母は故意でないにせよ娘夫婦(であってるよね?)を殺めた男を前に一粒種の孫を隔離することもできずただ帳簿の前で崩れ落ちることしかできない。そんでそのあとはなんかケロっとしてる。びっくりするわ(この映画急にケロっとしすぎ問題)。
亡くなったおっこの母(メーテル似)はつまり祖母の娘であるというその導線を、この脚本家はまったく意識していないように思える。おっちょこちょいにもほどがあるだろう。
なんにしてもこのキャラクターは映画にとってかなりキビシイ存在だ。
 
加えて不満に感じたのがおばけ2名の退場の仕方。
彼らが昇天するにあたっての理由が存在しない。
たとえばこれがおっこが大人になり見えなくなる、というなら道理はあるが、そういう話ではないのでやはりそうはない。
では、というと。
なんと突然天の声に言われたのでそうするのだ。作中でもそう言っている。
まじか。
このへんおっこの方に理由があるように演出するのはかなり悪手のように思えました。おっこ側から見えなくなる、という描き方をするのはちがうくないですか?
鈴鬼にいたってはどうやら退場しないようだ。しかし同じように見えなくはなる。なんなの。
 
そもそも論として。
彼らを現世につなぎ止めていた物はなんだったのか。
美陽。彼女が真月が生まれる前の姉であるならば妹が理由にはなりえない。とどまっているあいだに情がわいたのは確かであろうが本当の理由は棚上げされたままだ。
 
ウリ坊。ウリ坊は峰子ちゃんが好き。わかる。未練、あるかもしんない。ではこの90分の尺の中でその距離感は変わったか?変わらないのである。
いや、おっこを通じて今でも好きである、とは伝えられたからまあいいのか。(ただ、それならそれでもっと早くに肩に手を置かれるべきだと思う)
このへんウリ坊がいきいきと魅力的に描かれている分いっそうおなかのあたりがゴロゴロするんです。
 
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そんな感じです。
いろいろ書きましたが冒頭に述べた通り観てソンはない、気持ちを大きく揺さぶられる映画だと思います。
-了-